President's view

代表取締役 桐岡俊樹

『負の連鎖を断ち切るために』

いつも大変お世話になりありがとうございます。また毎度ビプロスニュースをご愛読下さいまして感謝申し上げます。

ついこの間新しい年を迎えたばかりだと思っていたのに、もう桜が散ってしまい、まもなく梅雨、そして夏へまっしぐらといった季節。皆さまはいかがお過ごしでしょうか。

この時期、皆様の中には新入社員を迎え入れたサロン様もあることかと存じますが、夢を持って当業界に飛び込んできた彼らの夢をさらに膨らませてあげられるよう、受け入れる側の我々も日々精進してまいりたいところです。

さて今年の2月頃に行われた朝日杯将棋オープン戦の話。中学生ながら史上最年少で六段となった藤井聡太棋士が羽生善治名人との対戦に勝利したニュースを覚えていらっしゃるでしょうか。羽生名人はプロになったのが藤井棋士と同じ15歳の時で、史上最年少記録を次から次へと塗り替え前人未到の永世七冠を達成し国民栄誉賞を得た方です。そのようなすごい棋士に勝利した藤井六段は本当にすごいことを成し遂げたなと感動を覚えました。

そこでふと湧いてきた疑問。もしタイムマシーンがあったとして、藤井六段が、羽生少年が15歳だった時代にタイムスリップし、二人が対戦したとしたら?もしかして羽生少年が勝ったかもしれないなどという妄想。

人は年齢を重ねることで積み重ねていくものがあります。それは経験だったり知識だったり知恵だったり。しかし一方でそれらに縛られて逆にどこかに捨て去ってしまったものも少なからずある気が致します。羽生名人がインタビューで藤井六段について『今まで経験したことのない打ち方だった』と仰っていましたが、もしかしたら年齢を重ねることで、経験や知恵が邪魔をし、昔は持っていた(はずの)チャレンジ精神だったり、怖いもの知らずの勇気だったり負けん気だったり。私自身、そのような大事なものを忘れてしまってはいないだろうか。ふとそんなことを考えさせられたニュースでした。

閑話休題。それでは本題の『負の連鎖を断ち切るために』をテーマに今回はお話しをさせて頂きます。ところであなたは以下のような経験をしたことはありませんか?

例えば朝、奥様と言い争いの喧嘩をしてしまい、気分が悪いまま会社へ向かう。歩いていると前を歩いている人が道にタバコのポイ捨てをし、それを目撃してさらに嫌な気分に。嫌な気分のまま下を向いて歩いているとすれ違った人と肩がぶつかり転んでしまう。イライラしながら会社に着き、『おはようございます』と挨拶すると、自分の気分の悪さが伝わったのか、いきなり上司からその元気のない挨拶を指摘されこっぴどく叱られ、落ち込んでいる所にお客様からの電話。心ここにあらずの態度が伝わったせいか、お客様からも叱責を受けてしまう、などなど。。このような負の連鎖。

良いことがある一方で悪いことがある。悪いことがあっても必ず良いこともある。『吉凶は糾(あざな)える縄の如し』などという言葉もあり、だからこそ人生は楽しいのだなどと人生を達観した先輩たちの中には、苦しい事が続いている真っ最中の我々にとっては理解しがたい哲学的なことをおっしゃる方がいますが、今大変な事態に遭遇している人にとってそれは軽口以外のなにものでもないでしょう。それにしても悪いことはなぜか不思議と立て続けに起こることが少なくないような気が致します。

ネガティブな感情がさらにネガティブな気持ちを増幅させ、結果、自覚してないところでネガティブな態度や行動を取ってしまい、それがさらに悪い結果をもたらしてしまう。負とも呼べるネガティブな感情や事象が目の前に起きて、そのままマイナスの感情を持ち続けると、まさに因果応報。不思議と輪をかけて悪いことが起きやすくなる、そんな経験はあなたにもあるのではないでしょうか。

例えばあなたが、社内の上司から怒鳴られたり、バカにされプライドを傷つけられたとします。言われたあなたはショックを受け、いつまでも負の感情を引きづってしまう。なんとかその事実を忘れようと努力しても、またその人に会うとその場面がトラウマとなって嫌な感情がよみがえってきて再び悪い気分になってしまう。

しかし一方であなたに嫌な感情を抱かせた相手は、それこそそういった事実があったことすら忘れてしまっている様子。あなたが嫌な気分でいることなど微塵も考えず、なにごともなかったように普通に生活をしている。結果嫌な思いをした自分だけがさらに嫌な思いをし続け、その影響で物事を前向きに考えられなくなってしまう。しかしこれではあなたは気分がいいはずがありませんよね。

会社と学校。学校時代は若干の不便はあったとしても反りが合わない人とは距離を置き、関わらなくても過ごすことが出来たかもしれません。しかし社会ではそれはなかなか通用するものではありません。付き合いたく無いと感じる人ともしっかりとしたコミュニケーションを取らなければ、仕事が回らなくなりお客様に迷惑をかけてしまったりすることもあるでしょうし、コミュニケーションを無視するとそれによって会社自体が弱体化してしまいかねません。なによりイライラしたままでは前向きに仕事に挑戦する意欲も削がれ、自分自身がいい仕事を出来なくなってしまうでしょうし、またこれでは自分自身の成長という観点からしても大きなマイナスです。だからこそこの負の連鎖をストップさせることが重要であり、そのためにまずは自分の力で、そしてその場でその負の感情を断ち切り、前向きに次のことを考えられるように自らを導く方法を見つけ出すことが必要となってくるのだと思います。

ところでこの連鎖を断ち切ってくれる考え方、心の持ち方をあなたはお持ちでしょうか?もし自分なりの方法をまだお持ちでない方のために私からの提案をふたつほど。(効果は人によって差異がありますので保証は出来かねますが)

ひとつは、とにかく相手を『許すこと』だと思います。落ち込んでいると、『そんなことは忘れなよ』とアドバイスをくれる方が多くいますが、嫌だったことや、それを作った人のことをそう簡単に忘れることなど出来ないもの。

だからこそまずは矢印を相手でなく自分に向け、逆に自分が相手に対して不快な思いをさせてしまった言動はなかったか、あるいは自分が悪かったことや相手に対してもっと他に出来ることはなかったかなどを今一度冷静になって考えてみる。もしかしたら相手だって悪意があったわけではなかったかもしれません。また使命感からつい心無い言葉を発してしまっただけかもしれません。そのように相手の立場になって考えてみる。そしてその人の弱さを受け入れてあげる。そうすると『私ももしかしたらちょっと悪いところがあったかも』などと心が少し落ち着き、あなたの心の中で氷のように固まってしまっている怒りや悔しさ、あるいはやるせない感情などが雪解けのように溶けて、嫌だったことを自分から断ち切ることが出来るようになるでしょう。そうすると今までマイナスにしか考えられなかったことが、不思議と感情がプラスに転化し、前向きに次の行動を考えられるように自分自身が変わっていくことが出来るかもしれません。

人は自分が思っているよりも、実はすでに多くのもの、例えば経験も知識も対応能力も持っているもの。相手が謝らないからとか、環境が整っていないからと出来ない(やらない)言い訳をして、今の感情やその場から動かないのでは時間の無駄。まずは自分がすぐに出来ることをやってみようとすることが負の連鎖から脱却する早道だと思います。

そして負の連鎖を吹き飛ばすためのふたつ目。

コミュニケーションの取れていない職場は、得てして空気が停滞しており、どんよりとした暗い雰囲気を感じさせます。するとそこにいるスタッフ達も日に日に元気をなくし、最後には仕事自体がつまらなくなって退職してしまったり、あるいはお客様もその空気感を敏感に察知し、徐々に来店するのが億劫になってしまったりすることも無きにしもあらず。これも大きな負の連鎖。

楽しい職場作りは大事な課題です。しかしそう簡単に出来上がるものではないし、またお金を払えば誰かが作ってくれるというものでもありません。

そのためにオーナーや幹部はじめ、スタッフひとりひとりが常に意識してほしいと思うこと。

それは『笑う門には福来たる』という言葉の通り、『笑っていると良いことが寄ってくる。』と考え、常に『笑顔と笑い声』を自らが発信してほしいということ。

楽しいことがあるから笑うのは普通でしょうが、それでは楽しいことが起きなければ笑顔のない職場になってしまいかねません。

そして、時として後輩や部下を叱りたくなることもあると思います。しかしただ叱ってばかりでは、あなたと彼らとの間に気付かないうちに大きな溝が生まれ、伝えたいことが伝わらないという事態に陥りかねません。なぜならそのような環境においてはコミュニケーションが脆弱なため、たとえあなたが正しいことをアドバイスしたとしても、いつも叱られている側は『また怒ってるよ』と端から耳を閉ざしてしまうからです。特に5回叱って1回ホメる、あるいは相手をじわじわと長時間かけて追い込むような叱り方をするような方は是非ご注意下さい。1回叱ったら5回ホメるくらいのバランス、あるいは仮にホメることがない場合でも、人間関係を良くしてくれる『ありがとう!』という魔法の言葉をたくさん発することが大事だと思います。併せて叱る時は、『ネチネチ、長時間』でなく、『カラッと短時間で真剣に』が良いのではないでしょうか。

『柳のようにしなやかにしたたかに』。仕事をする上で、折れない心を持ち続けること、つまり感情のコントロールをすることは時として非常に大事なことだと思います。

最後に、日本国内でも多くの学校や会社が新年度を迎え、多くの新人たちが社会人として、また新たな仲間として会社に入って来る中、決して負のスパイラルに陥らないよう、またたとえ陥ってしまったとしてもいち早くそこから脱却し、正のスパイラルに転化出来るよう、そして常にあなたがいる職場において明るい空気が行きわたり、あなたを含め仲間全員が今の仕事、職場を『楽しい!』と感じて一日一日を過ごせるような環境を保ち、そしてそれがこれからも続くことをご祈念致します。

今回もプレジデントビューにお付き合いくださいまして有難うございました。

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