President's view

代表取締役 桐岡俊樹

『ぬるい環境をぶち壊す!?』

新年明けましておめでとうございます。
新たな年を迎え早くも1ヶ月が過ぎようとしていますが、皆さまはどのような新年をお迎えでしょうか?
旧年中は社員共々大変お世話になりましたこと、まずはこの場をお借りして心より厚く御礼申し上げます。本年も倍旧のご厚誼を賜りますことを心よりお願い申し上げます。
それでは今年もビプロスニュースをスタートさせて頂きます。

昨年も年末に大きな目標を掲げ、その目標に向けてスタッフ一丸となって取り組み、それをクリア出来たサロン様も少なくなかったことと思いますが、一方でなぜか期待だけが先行して、サロン全体の動きには今ひとつピリッとした緊張感が感じられず成果が出なかったと嘆いているオーナーや幹部の方もいることと存じます。

新年を迎え、皆様におかれましては目の前のやらなくてはいけないことに忙殺されながらも、昨年度の総括と、併せて今年のビジョンや行動計画の作成などをやり終えたあるいは作っている最中の方もいるかと拝察致しますが、いずれにしましても新たな年を自らがびっくりするくらいに良いものにするためにも、スタートダッシュをかけていきたいところです。

さて、昨年末のこと。あるサロンオーナーから、やるべきことが全く計画通りに進まず、結果として昨年は目標を達成出来た月が一度もなかったという嘆きの声をお聞きしました。美容業界では前年以上の売上を確保できたサロンの比率は極少であり、全体としては昨年も決して明るいとは云えない年だったとは思います。しかし、一方で元気なサロンはさらに元気になっているのも事実。
思い出してみると、その嘆きの声を発していたオーナーのサロンの店長から昨年のスタート時にお聞きしたのは、『みんな少しずつ良くなっています。この調子なら今年こそはきっと目標を達成出来る年になると思います!』という頼もしい言葉でした。
なぜこのサロンは昨年中一度も目標を達成することが出来ない状況に陥ってしまったのでしょうか。

そこで今回は、『ぶち壊そう、そのぬるい雰囲気』をテーマに話をさせて頂きます。
皆さんは『飼いならされた野ガモ』の話をお聞きになったことがあるでしょうか。
本来秋頃になると、鴨の群れは食べ物を求めて南へと旅立っていくもの。しかしある時、湖のほとりに住む老人が野ガモにエサを与え始めます。すると野ガモたちは飛ばなくとも食べ物にありつけるので、次第に冬になっても南へと飛び立たなくなっていったのです。さらに鴨たちはブクブク太って飛ぶことすら出来なくなります。そんなある日、その老人が亡くなって、野ガモたちは誰からもエサをもらえなくなってしまいます。しかしその飼いならされた鴨たちはもはや飛ぶことは出来ず、すべての鴨が死んでしまった。という話。

これはIBMの精神として有名な話です。『現状では食べていけるからこのままでいい』『なんとか経営が成り立っているから大丈夫だろう』などという生き方をしていたら駄目。いきなり強力なライバル店が隣に出来る等いつ危機が来るかわからないわけで、外部的事情によって状況が一変する可能性だって否定することは出来ません。常に野性味と危機感を持って生きなさい。毎日毎日が真剣で革新の連続でなければ未来はないというものです。

さて冒頭の店長の話。その店長は、人柄も素晴らしく、明るさは天下一品。常にスタッフに対して優しく、相談事にも気さくに乗ってくれる頼りがいのある店長としてスタッフからの評判は悪くないようでした。しかしながらこの店長に対するオーナーからの評価は全く逆で、部下の言うことをただ聞いてスタッフを甘やかすだけの『甘ちゃん店長』。
店長の発言とオーナーの心の声のやり取りを推察すると。
店長『少しずつ良くなっている』に対してオーナーの心の声は、『少しずつって、いったいいつまでこの程度の状態で良いと思っているの?本当に良くなる頃にはオレはおじいちゃんになってるよ。それよりその前にお店がもたないよ』
店長『今年こそは達成できると思っています』それに対してオーナーの心の声は『まるで根拠のないことばかり言ってるな。そのために店長はいったい何を変えようと努力するんだ?ただスタッフからの人気取りばかりして厳しいことのひとつも言えないくせに』あくまでもただの推測にすぎませんが、察するにオーナーの心の中ではこのような葛藤があったのではないかなと思います。

また話は変わって、先日弊社が人材募集をかけた時の話。たまたまある大手美容ディーラーの40代前半の幹部クラスの方からの応募がありました。
面接の場で『なぜその会社を辞めようと思ったのですか?』と聞くと、『売上は上がっているのですが、利益が全く出なくなってきて給料が…』と一言。
私は唖然として、3分で面接を切り上げました。というのも安定を求める気持ちは当然理解出来ること。しかし、会社が大変な時だからこそあなたのような幹部がいるのではないのか。安定した成長を続ける環境を作るのは会社でなくあなた自身ではないのか?そんなやるせない悲しい気持ちを消化しきれませんでした。
自らが成長出来ていないことに目をつぶり、それにもかかわらず安定した給料や役職だけは権利として主張する人、あなたの周りにはいないでしょうか。

しかしその後冷静になって考えてみると、前述の店長然り、面接に来てくれた求職者然り、彼らだけが責められるべきものではないのではないかと考えるようになりました。スタッフに嫌われるのがイヤだから、皆が目標を見据えた行動を出来ていなくても彼らに対して厳しく接することが出来なかったり、給料が上がらないから転職しようとする行動。これは決して責められることではなく、もしかしたら一般的には普通のことなのかもしれないなと。
実は、その『甘ちゃん店長』に責任転嫁し、彼の言動を知りながらも何も注意せず、業績不振でも目をつぶっていたのは誰か。また社員が辞めたくなるほどの業績悪化が顕著になっても何の策も打たなかったのは誰か。そう、それは間違いなくそれぞれの経営者であり幹部なのだなと妙に納得。もしかしたら『飼いならされた野ガモ』になっているのは彼らではなく、経営者や幹部自身なのかもしれないなと、改めて私自身、自らの襟を正そうと感じた瞬間でした。

面倒な問題や課題をそのうちなんとかなるだろうと放っておいても、いつか周りの環境が後押ししてくれて勝手に状況が改善されるまでのんびり待っていられるほど、今は甘い時代ではありません。決して楽観的に考え過ぎず、あるいは考えることから逃避してそのまま放置せず、気付いた時が最も旬の時。経営者や幹部自らが、他人でなく自分自身に矢印を向けて自問反省し、危機感を持ってその瞬間その瞬間に迅速に解決に向けた対応をしていかなければいけないのだと思います。

ぬるい環境は、意に反していとも簡単に出来上がってしまうものです。厳しくすると嫌われる?スタッフが辞めてしまう?もちろん色々な不安はあることと思います。しかしぬるい考えや環境を放っておくことは、スタッフの成長、そして会社の成長を止め、結果として給料をカットせざるをえない状況に陥るなど、かえってスタッフ皆の不幸を産み出す原因となりかねません。嫌われたとしても言うべきことを言い、やるべきことは無理してでもやらせる。そして当然自らもやるべきことはやる。この責任感の共有無きところに組織の成長はありえません。

『働き方改革』なるものが声高に叫ばれる昨今、今までと同じ時間感覚のまま、同じ方法で仕事をしていたのでは、もはやなにがしかの問題が噴出してくるのは自明。決められた時間や枠の中で、どれだけ成果に繋がる行動が出来るかが大事です。そのためには、仮に、自らの役割や責任に対してなんとしてでもやり遂げなければいけないという強いプレッシャーを受ける厳しい職場だったとしても、ひとりひとりがその責務に真剣に向き合うことで結果、業績が好転して、スタッフ皆の給料が上げられるようになったり、待遇を改善することが出来るようになったりしたら、最終的には間違いなくスタッフは喜んでくれるはず。あれほどうるさくて毛嫌いしていたオーナーや幹部に対しても、実は愛情あってこその厳しさだったのだと理解し、心から感謝さえしてくれるようになるものと信じます。そしてそうなってこそ初めてそこから真の『チームワーク』が生まれてくるものなのではないでしょうか。

この一文を書いていて、野球界の王貞治さんが昔話していた言葉を思い出しました。『チームのためになどと云う人は言い訳ばかりであてにならない。自分のためにやるからこそ自分に厳しくなり、結果それがチームのためになる。』と。
優しさという仮面を被った甘くぬるい環境をぶち壊し、オーナーや幹部も含め、スタッフ一人一人が自らの役割を言い訳なしでやりきることが、『らく(楽)』ではなく真に『楽しい』職場を作るためには不可欠であり、その環境を作る為にも時としてはスタッフに嫌がられたとしても心を鬼にしてでもやりきる覚悟、そしてやらせる覚悟を持って行動することが経営者、そして幹部の大事な責務なのだと改めて感じさせられた二つの出来事でした。

最後に、本年が皆様にとって悔いの残らない一年、そして飛躍する素敵な一年となりますことを心よりご祈念申し上げます。本年も引き続きご指導ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
今回も最後までお読み頂き有難うございました。

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