『あなたの言葉は、間違って理解されていませんか? 教育はスタートダッシュが肝心』
新人を採用されたサロン様では、新入社員も入社して数カ月が経ち、大分会社にも慣れてきた頃かと存じます。これからその新人達が、人財になるか、ただの人在で終わるか、はたまた人罪になってしまうかが決まっていく、そんな時期ではないかと思います。今回は、『あなたの言葉は、間違って理解されていませんか?教育はスタートダッシュが肝心』というテーマでお話をさせて頂きます。
よく、最近の新人は『何を考えているのか分からない』、『言葉の意味を理解してくれない』などと、愚痴をこぼすサロンオーナー様が少なくない気が致します。そのようなオーナー様に、『何をどのように伝えたのですか?』と尋ねると、『顧客満足が大事!』とか『気持ちいい接客をしなさい!』など、体裁のいい抽象的な言葉だけを伝えているケースが見受けられます。はたしてこの言葉だけで、新人がその意味を十分理解し、オーナーの期待する行動を起こすことができるでしょうか?またこれであなたの熱い想いが伝わるでしょうか?
教育とは、オーナーであるあなたが、そのビジョンに基づいて発する言葉の意味を明確に、より具体的に教え込むことであり、一般論を抽象的な表現で伝えたところで、その真意が伝わりにくいだけでなく、それでは教育したことにはならないのではないでしょうか。仮にあなたのサロン以外では非常識と思われるかもしれないような内容でも、あなたのサロンの中だけでは常識として通用する、あなたの魂のこもった言葉、その『意味を共通言語として教えこむこと』、これが入社して間もない新人に最初に施すべき教育というものなのではないでしょうか。
これは会社に慣れて自分の仕事観が固定観念として固まり始めてからではもう手遅れ。たとえばあなたが、『お客様に満足して頂けるサービスを徹底しよう』と日々発信していたとします。そこでなかなか成果の上がらない新人に『お客さんに満足してもらえるサービスが出来ているのか?』と尋ねたとします。新人は『はい。ちゃんと出来ています』と答えるかもしれません。
あなたにとって、サービスはお客様に言われる前に提供するものであって、決して言われてから仕方なくやる作業ではないはず。
また、『新規で来店されたお客様には『すぐに』サンクスDMを出そう!』と指示をしていたとします。あなたの『すぐに』という言葉の意味は、DM発送が一週間後でいいはずはないですよね。しかし、それを新人が今日中にやらなければいけない仕事として認識できているでしょうか?あるいは、『挨拶は明るく元気よく!』と訓示しながらも、だらけた挨拶をしている新人に誰も厳しく注意しなければ、新人は『挨拶はこの程度でいいんだ!』と勝手に判断してしまうでしょう。
注意されて、仮に『はい。わかりました』と返事はしても、言葉はあくまでただの『建て前』にすぎません。『本音』は実際に起こした行動そのもの。そう考えれば、注意されて行動がすぐに変わらなければ、おそらくその新人にとって言葉の意味が理解できていないか、そうでなければ本音では、すでにどうでもいいことという感覚を持ってしまっているということです。新人は入社後3カ月もすれば、自分の会社や先輩のことを自分なりの価値観で全て見抜きます。そして自分なりの価値観が出来上がってしまった後に、いくらもっともらしい話をしても、時すでに遅し。他人の言葉など耳に入らなくなり、そうは簡単に行動を変えることが出来なくなってしまうものです。
だからこそ、最初が肝心。新人が会社に、そして仕事に慣れてしまう前がとにかく教育にとっては最重要の時期なのです。逆にいえばまだ価値観が確立されていないこの今の時期を逃して、『もう少し会社の雰囲気に慣れてから』などと悠長に構えていると、取り返しがつかないことになってしまいます。『最近の新人は…』という愚痴を繰り返さないためにも、今からでも遅くありません。まずは他のサロンではない、あなたのサロンだけの言葉の意味(真意)をわかりやすく表現し、それを共通言語として認識させ、『やらなければいけないことと、やってはいけないこと』これを頭にたたきこませること、これが教育の第一歩なのだと考える必要がある気が致します。
そのような背景から、弊社ではこの度、日々我々が使う言葉の真の意味を新人が誤解せずに社内の共通言語として共有できるようにしたいとの想いから、ビプロス用語辞典(クレド)なるものを作りました。
まだまだ稚拙なものですが、今後毎年新しい言葉を付け足しながら作り替え、将来的には誰もが読めば会社の考え方を理解でき、これを中心に行動できる、そんなバイブルのようなものに仕上げていきたいと思っています。
現実これを作ったことにより、ベテラン社員同士の会話の中にもクレドの言葉が飛び交うようになり、お互いの中で過去からの勝手な思い込みが修正されるようなことが起き始めています。是非皆様にも自社オリジナルの用語辞典をお作りになられることをお勧め致します。
愛情ある教育の最大の敵は『無関心』。そして優しさと甘さは混同してしまいがちなもの。『人はほめて育てよう!』などの類の経営本が多数出ていますが、ただほめるだけで人が育つはずがありません。もしほめるのであれば、ただほめるのではなく、『よくやった!』の後に『君はこれが出来たのだから、次はこれもやってみよう』と次の行動を示唆し、背中を押してあげるなどのフォローを徹底する必要があります。これがなければ、ほめる効果は無いに等しいものと思います。しかし、基本は真剣に心から叱ること、これがあるからこそ人は気付き、成長し、そしてほめることが活きてくるのだと思います。それがなければ、自分勝手を個性と勘違いした、不思議な輩を世に増やすだけ。
あなたは常に新人に対して関心を持ち、厳しく接することが出来ていますか?新しい仲間の成長は、間違いなく会社の力となり、彼らの成長の和が会社の成長の和となるはずです。『最近の若い奴は…』などとおやじ臭いことを言う前に、真剣に新人たちに、そしてそれだけでなく全てのスタッフに対しても、もう一度原点に戻って正面から向き合ってみませんか?