President's view

代表取締役 桐岡俊樹

『もしかして無駄な時間?』

一部では暖冬を予想する声もありましたが、とにかく寒い!そんな冬が終わり、ようやく日差しに暖かみを感じる季節になって参りました。日頃は大変お世話になり有難うございます。また毎度ビプロスニュースをご愛読頂き有難うございます。

さて、今回は組織作りをテーマにお話をさせて頂きたいと思います。 ご存じの方も多いかと思いますが、『2:6:2の法則』なる組織論、あなたはこのことについて深く考えたことがありますか? これは、ビジネスで大きく成功していくには、自分一人の力では難しいため、組織化することが会社にとって重要なこと。しかしそのためにどんなに同じような優秀な人間ばかりを集めても、結局は2:6:2の能力構成比になってしまうという理論です。積極性があり、優秀な実績をたたき出す上位20%のグループ、どちらでもない60%のグループ、それと積極性もなければ実績も出ない、当然行動もしない20%のグループ。組織作りにおいて大切なのは、上の2割ばかりを集めようとしないことと、下位の2割を切り捨てないこと。上の2割ばかりを集めても、必ず一定の割合で足を引っ張る輩が出てくるものであるし、また下位の2割を捨ててしまうと、優秀だったはずの2割の人たちも優秀のままではいられなくなってしまうというもの。このような考え方を一般的に『2:6:2』の法則と呼びます。

しかし、どうせこの構成比になるのだから仕方ないやと半ば諦め気分で、必要悪として下位の2割をそのまま放っておける程余裕のある会社は、現実にはそう多くないのも事実でしょう。

先日、あるサロンの経営者と話をしていて、そのオーナー様の下位2割に対する対応に関して、私自身、若干違和感を覚えたことがありました。それは、会社を変えたい、もっと良くしたいと強く願うオーナーがいて、それを他人事でなく、自分事として感じ共に動こうとする上位2割と、自分は実はどちらでもよく、エネルギーの強い側になびいてしまう6割、そして自分の価値観だけに囚われ、それに反することに関しては平気で周りの足を引っ張ったり、会社で決めたことに対して常に斜に構えて、非協力的なスタンスを取る下位の2割。その経営者は、下位の2割をなんとか引き上げたいとの想いから、そのスタッフに対して、他のどのスタッフに対してよりも限りなく多くの時間とお金を費やして、そのスタッフを変えようと日々努力を続けていました。しかしそのスタッフは変わることなく、数ヵ月後、結局そのスタッフは退社してしまったといいます。

ここで改めて認識しなければいけないことは、変わりたくない人を他人が変えるということは、難しいというより基本的には無理だと言うこと。私自身も以前は、そのオーナー同様、心を開いてくれないスタッフも、いずれはきっと理解してくれると信じ、信じ続けることや忍耐こそが重要だと固く信じていました。しかし、人は環境によって(自らの意思で)変わるものであって、人の言葉で簡単に変わるものではありません。ましてや、頑に自分を変えることへの不安が強い、変わりたくないと思っている人は、まずもって周りが何をしても変わらないもの。ちょっと前までは私自身もそうでしたが、得てして経営者や幹部達は変われない人を他の人と同様に理解させようとしゃかりきになり、変えようと必死になるもの。しかし最近、人との関わりには、無駄なことなどないと信じたい気持ちがある反面、これは実は時間の無駄なのではないかと考えるようになりました。

人が、環境によって変わる生き物だとするならば、会社全体を良くする為には、変わりたくない個人を引っ張り上げる事に多くの時間を使うのでなく、まずは会社の環境を前向きに持っていくことに集中することが大事なのではないか。そう考えると、まず経営者が為すべきことは、年齢や経験などを度外視してでも、共に会社を良くしたい、前向きに変えたいと思ってくれる、あるいは思ってくれそうな資質を持ったスタッフを見つけることが第一。そしてこのグループにこそ、経営者の時間と力を集中させ、自らのビジョンや目標を浸透させていく。そうするとこのグループの面々は、おそらく意識とエネルギーが益々強くなり、更に前向きな行動が取れるようになるはず。そうなるとそれを見ている周りのスタッフたちはどう変化していくでしょう?真ん中、つまりエネルギーの強い側に引っ張られる6割は、足を引っ張る側にいる人の愚痴や不満話に、徐々に耳を貸さなくなり、上位のグループに歩み寄ってくるのではないでしょうか。すると、残された下位の2割はどうなるでしょう?私にも断言は出来ませんが、おそらく孤立し始め、『このままじゃちょっとマズいんじゃないか?』と自分自身の身の振り方を意識するようになるのではないでしょうか?その時がきて初めて、彼らはようやく他人の話を前向きに聞いてみようという姿勢に変わり、その時こそが、改めてオーナー自らが自分の時間を使い、彼らを引き上げるタイミングなのではないかと思います。場合によっては、双方にとって本意ではないでしょうが、彼らがドロップアウトすることもあるかもしれません。しかし、それはそれとして受け入れることが、強い組織作りのためには必要な試練なのだと、前向きに捉えればいいのです。

そういった意味では、頑なに変わろうとしない頑固者に対しては、まずは放っておくに限る!この姿勢が、時として経営者に必要なのではないかと思います。

以前、スタッフが辞めない会社こそが、いい会社の定義だと仰っていた方がいましたが、誤解を恐れずに言うならば、これから益々混沌とする、ある意味戦国時代といっても過言ではない時代において、誰も辞めない会社は、逆に空気が澱みかねず、もしかしたら、居易いだけの会社(=楽な会社)なのかもしれません。この紙面で何度も書かせて頂いていますが、真の厳しさは愛情であり、中途半端な優しさは、甘さや無関心と混同しやすいものです。

オーナー自身が目指す、熱いビジョンに基づいた会社作りが出来たら、必ずやスタッフだけでなく、お客様や周りの皆も幸せになれるはず。それを信じて、恐れず、怯まず、自信を持って組織作りを前に進めて頂けたら幸いです。

最後に、『最も大切な人材とはビジョンを共有して仕事が出来る人。次に大切な人材とはビジョンを共有して仕事が出来ない人。そして不要な人とはビジョンも共有せず仕事も出来ない人。しかし、会社を崩壊させるのは、ビジョンを共有せず仕事が出来る人である。』

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