『たくさんの水をくむためには』
今と違って昔は水を汲むのに桶を使っていました。その桶とは、底板の周りに何枚もの板を組み合わせそれを番線の様なもので縛っていたそうです。
桶に入る水の量はその周りの木の高さで決まります。皆が同じ高さであれば問題はないのですが、もし低い板があれば水はその板の高さにまでしか入らない。と言う話でした。
私が美容ディーラーの営業になったばかりの時にその話をして下さりました。それぞれの板の高さを自分の長所と短所だと。頭が良い、背が高い、情に厚い、しかし時間を守らない。仕事が早い、とてもおしゃれ、知り合いが多い、しかし約束をよく土壇場でキャンセルする。清潔感がある、美容知識が豊富、愚痴をこぼさない、しかしお金にルーズ・・・オーナー様が私に言いたかったことは、長所を伸ばすことも大切だけど低い板を伸ばさないと沢山の水を汲むことは出来ないぞ、と言うことだったと思います。
沢山の塾に通い頭は良いが挨拶のできない子供が多い気が致します。サッカーだけ上手けりゃマナーが悪くても食べ物の好き嫌いが多くても良いと思っている馬鹿な親が増えている気がいたします。言葉が乱暴でした。申し訳ありません。もちろん、サッカーは一例です。我々人間の生き方も美容室の経営も同じとは言いませんが似ていると思います。
8年前に初版された稲盛和夫さんの「生き方」を今更ながらではありますが先月読みました。今後、私の聖書として繰り返し読みたいと思いました。そこにも書かれていましたが、経営者の方々は何故経営をしているのか、人それぞれ違いがあるとは思いますが、人生が終わるまでの間に多くの水を汲むためではないでしょうか。間違いないのはお金だけではないと言うこと。短い板を伸ばす努力をしてこそ、人の痛みや苦しみが解ると思います。まだまだ私自身が低い板だらけですので偉そうなことは言えません。
しかし、お客様が自分を嫌っても必要とされなくなってもこちらから縁を細くするような行為は取ってはいけないと感じております。何故なら自分の中で低い板を作ることになってしまうからです。
もちろん、ビジネスが正義や正論だけで済まされないことは解っております。自分自身に存在する低い板を伸ばす気があるか、はなから無いか、ここの違いだと思っています。厳しい世の中である現在、策だけで本当に勝てるのでしょうか。 もっともっと人間を磨くことの重要性が今はあるのではないでしょうか。人間を磨くとは、部下や仲間と本気で話し合いお互いがお互いから教育を受けること。繰り返しますが、価値観は多様にあります。私のような考えがごく一部の考え方で偏っていることも承知しております。
ただ、こんな時代だからこそ誤解を恐れず、自分たちの為だけの生き方を堂々と批判したいと思います。共存しようと必死に考える生き方は、きっと低い板を少しづつ高くする生き方だと信じます。
今年は秋をとばして冬に入った様な気が致します。秋と言えば『紅葉』電車の車内広告で読売新聞の『編集手帳』がとてもいい内容でしたのでご披露いたします。今年も一年本当にお世話になりました。どうぞ年末はご自愛を頂き良い年をお迎えください。
紅葉が美しく色づくには
三つの条件があるという。
昼間の日差し、夜の冷気、そして水分である。
悩みと苦しみ(冷気)に打ちひしがれ、
数かぎりない涙(水分)を流し、
周囲からの温かみ(日差し)に触れて、
人の心も赤く、黄いろく色づく。
紅葉の原理は、どこかしら
人生というものを思わせぬでもない。編集手帳より